いつでも一番星
「……なんかときどき、都合よく考えちゃうんだよね。ちょっとはわたしの想いが、伝わったのかなぁって。ゆっくりでも近づけてたらいいのになぁって。わからないナツくんの気持ちに不安になる一方で、期待しちゃうの」
ことん、と。
指先で揺らしていた小瓶の底がテーブルに着地する。
鮮やかなオレンジ色の星と淡い色に染まっている小粒の塊。
着地の衝撃でそれらが、小さな瓶の世界の中でほんの少し揺れていた。
……ずっと、考えていた。
ホワイトデーにこれを貰ったときから、このお返しの意味を。
きっと特別な意味なんてない。
そう思うくせに、小さく引っ掛かるものが胸の奥にすとんと舞い降りてきたのも確かで。その小さな希望にも思える事実に、都合よく期待してしまう。
でもナツくんに聞いて本当のことを確かめる勇気なんかはなくて、結局は答えを知るすべもなくずっとひとりで考えていた。
その悩みを初めて、茉理ちゃんに打ち明けてみる。
「……わたし、オレンジが好きなの。色としても、味としても」
小瓶の蓋は閉まったままなのに、鼻先に甘酸っぱいオレンジ味の飴の香りを感じたような気がした。
錯覚のそれは、秋の始まりの頃のナツくんとの会話を彷彿させる。
――『俺、オレンジが好きなんだ』
――『わたしもね、オレンジが好きなんだよ』
眩しいオレンジ色としっとりしたネイビーブルーが混ざりあっている空の下で交わした言葉。
そのときの光景はしっかりとわたしの中に焼きついていて今でもはっきり思い出せるというのに、あれはもう半年も前のことだ。