いつでも一番星
ナツくんのからのお返し。
その小瓶の中を満たす飴の味は、ナツくん同様にわたしも好きなオレンジだった。
たまたま、なのかもしれない。
この星形の飴と金平糖の組み合わせでは飴はオレンジ味のものしか売っていなかったのかもしれないし、売り場で適当に手に取った小瓶の中身に偶然オレンジ味の飴が入っていただけなのかもしれない。
ナツくんがわざわざオレンジ味を選んだ保証はどこにもない。
……けれど、どうしても期待してしまう。
ホワイトデーの日にありがとうって言ってくれたナツくんの優しい笑みが心からのもので、チョコバーの中のオレンジにたまたま気づいてくれていたのなら。
もしかして、同じようにわざとわたしが好きなオレンジ味を選んでくれたのかもって……。
考えすぎなのかもしれない。
でももしこの期待が本当のことだとしたら、それほど嬉しいことはない。
一瞬でも、わたしのことを思い浮かべてくれたのかな。そうだとしたらわたし、ナツくんの心にほんの少しでも近づけてる?
そう思うだけで胸がいっぱいになって、満たされる想いをもて余していた。
「ナツなら、きっと雫の話を覚えてくれてるよ」
やわらかな声が降ってきて、いつしか俯いていた頭を上げた。視線の先には、声色と同じ雰囲気をまとった茉理ちゃんがいる。
「ナツって、そういうやつだもん。友達の雫が話したことなら、些細なことでもちゃんと覚えてるよ。だから、雫のためにその飴を選んだと思う。それって、ナツが雫のことを大切に思ってる証拠じゃないかな」
ゆっくりと言葉を選んだ茉理ちゃん。
それはナツくんと中学時代からの友達で、ナツくんのことをよく知っている彼女ならではの言葉に思えた。