いつでも一番星
「……なんか、ああいう試合を見るとさ。全国で一番までの道って、思ってるよりもずっと遠いなぁって思わされちゃうんだよね。あの北野総合でさえ、1勝もできないんだもん」
ふっと、息をこぼす茉理ちゃんの瞳は、桜の枝から影の先へと向けられた。
そんなことないよ。南田高校野球部のみんななら、一番にだってなれるよ。
……そう、言葉にすることは簡単だった。でもそれをわたしが口にしたぐらいでは、全然重みがない空っぽな気休めにしかならない気がして……結局何も言えずに口を噤んだ。
茉理ちゃんやナツくん、横峰くんなら、北野総合学園の強さをよく理解しているだろう。そしてその背中に追いつくことができずに、秋季大会を4位で終えて涙を飲んだ記憶も深く根付いていると思う。
そんな経験を経たみんなの目には、あの春の選抜の試合はどんなふうに映ったのかな。
高校球児なら、みな甲子園球場でプレーする日を夢見ているだろう。
でもそこに立った北野総合学園……南田高校より強者の、ましてや強豪校と呼ばれているあの学校でさえ、優勝への道半ばでそこを去ることになってしまった。
あんな姿を見たら、目指していた場所をさらに遠くに感じてしまわないのかな……。
県内トップ。その地位を手に入れた学校でさえ届かなかった、全国トップの地位。それは手の届かないさらなる高みだと、厳しい現実を突きつけられたりしないのだろうか……。
いつになく弱気にも見える茉理ちゃんの言葉を聞いていると、お節介なことにそんな心配をしてしまう。
わたしが心配しているようなことなんて、きっと本人たちが一番理解しているのだろうけど……。