いつでも一番星
茉理ちゃんは足元に転がっていた小石を蹴ると、自分に言い聞かせるように口を動かし続けた。
「――でもさ、目指す場所が遠ければ遠いほど、きっと到達したときの達成感は大きいんだと思う。立つことが難しいあのグラウンドでプレーして、誰よりも長く野球をできたら、それってすごく素敵なことなんだろうなって……期待が、大きくなる。夢が膨らむんだよね」
ふわりと、風がわたしたちの髪をさらっていった。
見送りのためだけに出てきているわたしは上着を羽織っていなくて、少し肌寒く感じた。傾いている日が、雲をオレンジ色に染めている。
「そう考えると、まだまだ頑張ろうって思えてくる。野球部のみんなが天辺まで上っていくところを、マネージャーとしてちゃんと見届けたいなって。夢が叶う瞬間をそばで見ていたいなって強く思う。そのために一番になる日を目指して、一緒に頑張っていこうっていうやる気がみなぎってくるの。高みを目指すほど頑張る甲斐がある気がして。……まあこれはあたしの勝手な思いだし、部員のみんなは同じように思ってないかもしれないけどね」
へへっと笑う茉理ちゃんは、恥ずかしそうに風で乱れた前髪を手で直す。
瞳を輝かせる意志は本気だとわかるもので、野球のことも野球部のみんなのことも大好きなんだって伝わってきた。
それぐらい熱く真剣な思いを、茉理ちゃんは胸に宿していたんだ。
わたしも風に流される髪を耳にかけながら、さっきと違って今度は思ったことをそのまま言う。