いつでも一番星
そしてきっとナツくんのことだから、学校で練習しているときと変わらず真剣な眼差しで取り組むんだろうなぁ。
いつでも、前を見据えて。
いつでも、芯の強い思いを抱いている。
そしていつでも変わらず真剣に、大好きな野球に取り組む。ナツくんは、そんな人だから。
ナツくんらしい姿を想像すると、さらに楽しみな気持ちが深まった。
「……おっと、もうこんな時間か。お見送りしてもらってすぐに帰るつもりだったのに、ついつい話し込んじゃってたね」
「うわ、ほんとだ! もうこんな時間!」
薄暗くなった辺りを目にして慌てて茉理ちゃんが覗いたスマホを、わたしも横からちらりと覗き見た。
スマホの画面に表示されているデジタル時計の数字は、家を出た時間から思いの外進んでいる。
どうりで空も夜の色に染まっているわけだ。
家路へと足を進めながら茉理ちゃんはこちらを振り返る。
「じゃあ、また明日学校で。クラス替え、一緒のクラスになれるといいね」
「うん、一緒のクラスだといいね。またね」
新学期に期待をこめた言葉を交わして手を振り合い、わたしたちはようやく別れた。
少し先の路地を曲がる後ろ姿を見送ってから、わたしも自宅に入ろうと門扉を開ける。
そこでふと、門灯で照らされた足下に薄く影が出来ていることに気づき、日が暮れていたこと改めに認識する。
そして、自然と目が空に向いていた。
……たったひとつの、輝きを見つけるために。
一番星を探すその動きはすっかり身体に馴染んでいて、いつもと変わらず広い空をぐるりと見渡した。
そして、目に飛び込んでくる。わたしを惹きつけるように瞬いて存在を主張している、たったひとつの星が。