いつでも一番星


一番星に祈り続けていたら、いつか願い事が叶う。
迷信のようなそれを信じて、小さい頃から空を見上げるのが癖だった。

でも特に空を見上げて一番星を探すようになったのは、ナツくんと一緒に一番星を見たあの日からだと思う。

だけどそうやってどれだけ意識していても、長期間連続で一番星を見つけることはなかなか難しい。

今日は見られたけれど、昨日はあいにく曇っていて見つけることができなかった。おとといまでは珍しく1週間ほど続けて見られていたけど、そこであっけなくぷつりと記録が途切れてしまったんだ。


「……いつか、願い事は叶うのかな」


祈り続けることの難しさを思うと、思わず一人言が漏れた。

そっと指先を一番星と重なるように掲げるけれど、当たり前のごとく触れることは叶わない。


ナツくんのそばにいたい。

その願いは、どれだけあの星に祈ることができたら実現するのだろう。

どれだけ想えば、わたしは……。


「……」


ぴゅうっと。吹いた風の音が耳元をすり抜けていく。

一瞬強く吹いたそれによって、向かいの家の桜の木から数枚花びらが飛び去っていった。

身体の横に下ろした腕の先の手を、ぎゅっと強く握り締める。


……ほんとうは、わかってる。

祈るだけでも、想うだけでも。それだけじゃ、わたしの願いが叶わないってこと。

もっと自分から近づいていかないと、彼の心には伸ばした手さえ届かないということを。


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