いつでも一番星
朝は前のクラスの下駄箱に置いてあった自分の上履きにそこで履き替えて、外靴もとりあえずそこに入れる。
そして始業式が終わったあとのホームルームの時間に、それぞれ新しいクラスの下駄箱へと靴を移動させることになっているんだ。
そんなわけでまだ2年2組の下駄箱の中に入っていた上履きに履き替えながら、ぽつりと言葉を落とす。
「……なんだか、羨ましいなぁ」
「えっ、なにが?」
「んー、横峰くんだよ」
茉理ちゃんにそう返しながら再び視線をふたりに向ける。
茉理ちゃんも同じようにそちらに顔を向けたかと思うと、納得したような顔で今度はわたしを見た。
「あー、なるほど。唯斗みたいに、雫もナツといちゃいちゃしたいってわけか」
「ちっ、違うよ! そうじゃなくて……!」
「えっ、違うの?」
そりゃあ、あれだけナツくんとスキンシップできる横峰くんのことは、確かにちょっと羨ましい気もするけれど……。
今わたしが言っていることは、少し違う。
「横峰くんもわたしと同じ1組だけど、それでもクラスが違うナツくんと毎日会える機会があるんだなって思ったら、ちょっと羨ましくなっただけだよ」
1組と6組は教室がある階が違う。
だからきっと、廊下ですれ違うなんていうありがたい偶然的な機会さえほぼないだろう。
だからわたしにとってこのクラス替えは、かなり厳しいものだった。
今までは教室で、自然とナツくんに会えた。
挨拶だけでなく会話も気軽に交わせるような位置にいられた。
でももう、それは叶わないこと。