いつでも一番星
横峰くんや茉理ちゃんみたいに同じ部活に入ってるわけでもないから、放課後にももちろん会うチャンスはない。
わたしにできるのは、被服室からこっそりと、グラウンドで練習している姿を眺めることだけ。……これじゃあ、ナツくんと友達になる前のただ憧れていたときと一緒だ。
ナツくんに近づくために頑張ろうって決めたのに、状況としては前進というよりも後進している。
あまり恵まれていない自分の運と環境を思うと、ついついないものねだりをせずにはいられなかった。
「……わたしも横峰くんみたいに、毎日ナツくんに会いに行けばいいのかな」
「いいんじゃない、それ。わたしも雫が会いに来てくれたら嬉しいし」
「……いやでも、クラスが違うのに毎日とか、さすがにうっとうしいかもしれないしなぁ……」
「ありゃ、珍しくポジティブだと思ったら、またいつものネガティブに戻っちゃった」
すぐに自信を失って裏返るわたしの言葉に茉理ちゃんは苦笑いをする。
だけどやがて憂いを帯びた表情に変わると、頷くように言葉を続けた。
「でもまあ、ネガティブになっちゃうよね。好きな人のことになると、上手くいかなくなるし」
茉理ちゃんだってわたしと同じように、好きな人とはクラスが別になってしまっている。
そんな似た状況だからこそ、わかってくれるのもがあったのかもしれない。
好きな人のことになると、どうしても慎重になりすぎてしまう。
だって、嫌われたくないから。
恋に正しい選択肢なんてないのに、いつでも正しい答えを選んでいたくて。間違った答えを選ばないようにしたくて。
必死になればなるほど、いつも空回りしてしまう。