いつでも一番星
近づきたい。……でも、その近づき方で失敗はしたくない。
そう思うとついつい考えすぎてしまって、挙げ句の果てには思いついたことすべてがダメな方法に思えてきてしまうんだ。
なんだかとっても、負の連鎖。
何とかそこから抜け出して、ナツくんと親しい関係を築き上げるためのいいきっかけを生み出せるといいのだけれど……。
ローファーを靴箱に入れながら、知恵を絞り出そうと難しい顔で考え込む。
すると隣で靴を履き替え終えた茉理ちゃんが、ふと思い出したような口振りで言った。
「……あっ、でも確か雫、一応あるじゃん。会えるチャンス。だったらそこで、頑張るのもいいんじゃない?」
会えるチャンス……?
そんな希望、わたしにも存在してくれていたっけ?
言われた言葉の意味を、理解できなかった。
だから尋ねようとしたのに、出かかっていた疑問の声は背後からかけられた声によって引っ込んでしまった。
「平岡さん、ちょっと上履き取らせてもらってもいい?」
聞く度に、心臓がそわそわし始める……そんな好きな人の声が聞こえて慌てて振り返る。
わたしの背後、思いの外至近距離にナツくんが立っていて、声を聞いた瞬間以上に心臓が落ち着きをなくした。
突然スタートダッシュしたみたいなその動きに、一瞬息が詰まる。
「……ど、どうぞ! 邪魔してごめんねっ……!」
旧2組の下駄箱の前で話し込んでいたから、どうやらナツくんの靴箱を塞いでしまっていたらしい。
ナツくんの言葉の意味を理解するや否や、電光石火のごとくその場を譲った。