いつでも一番星
「いえいえ、ありがとー」
間延びしたやわらかな声でそう言いながら、ナツくんは靴を履き替える。
目の前のその姿を見ながら、もうこれからは同じクラスの下駄箱前でこんな些細な会話すらできないんだなぁって、しみじみと寂しいことを思った。
「……残念だったね」
「えっ?」
いつもの聞き慣れた芯のあるしっかりとした声ではなく、何だか気弱い声だった。
それが唐突に耳に届いて、何の話だと首を傾げながらナツくんに焦点を合わせると、ナツくんの視線は履き替えたばかりの上履きからわたしへと緩やかに向けられた。
さっき聞いた声に似合う、眉を下げた表情で。
「クラス替え、一緒のクラスになれなくて残念だったね。せっかく仲良くなれたから、また一緒のクラスになれたらいいと思ってたんだけど」
とても残念そうに、ナツくんはそう言った。
もしかすると、とても残念そうっていうのは、わたしがそうであってほしいという願望が見せた幻なのかもしれないけど……。
それでも、言われた言葉は本物で。
一緒のクラスになれたらいいとか、違ったから残念だったとか。
わたしが一方的に思っているだけだと思っていたことを、ナツくんも同じように思ってくれていたことがすごく嬉しかった。
ないものねだりばかりしてしまうわたしには、もったいないぐらい十分な気持ちだった。
「わっ、わたしも……! わたしも、同じクラスになれなくて、残念、だった……」
ナツくんに触発されて、唇はするりと素直な気持ちを紡ぎ出す。
それでも後半は気恥ずかしさが込み上げてきて、ついつい小声になってしまったのだけれど。