いつでも一番星


……わたし、今、どんな顔してるんだろう。

ナツくんとクラスが離れてしまって残念なはずのに、ナツくんの気持ちが嬉しくて思わず喜んでいるみたいに口角が上がってしまっていそうな気がする。

咄嗟に、それを隠すように少し下を向いた。


「本当に残念。……でも選択科目は一緒だし、また一緒に授業受けられるからよかった」


斜め上から再び耳に届いたナツくんの声。

心なしか今度はそれが嬉しそうに弾んでいるように聞こえて、そっと顔を上げてみると……。


「……っ」


ナツくんは、笑っていた。

時折見せてくれる、特別だと勘違いしてしまいそうになる、あのやわらかい顔で。


……ああ、もう。

ナツくんってばずるい。

そんな顔で、まるで安心したみたいによかったなんて言われたら、期待ばかりが膨らんでしまうよ。

ドキドキと、さっきからずっとうるさくて甘い響きが全身に伝わっていた。


「そ、そうだね! また一緒に授業、受けられるもんね! よかった……!」


ぎこちない口調で返しながら、ナツくんが話題に出した選択科目の授業とさっき茉理ちゃんが言っていた会えるチャンスが同じものであることにようやく気づいた。


そうだ、選択科目。

そういえばわたしには、まだそんなチャンスが残ってたんだっけ。


2年生の間に希望調査票を出して、すでに決まっていた3年次での選択科目。

その授業の内のひとつがナツくんと同じであることがわかって当時はとても浮かれていたのに、クラス替えのショックのあまりその希望を忘れてしまっていたみたいだ。


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