いつでも一番星
週に一度の50分だけ。
たったそれだけでも、会える機会がある。
そのことを思い出すと、途端に光が差したみたいに視界が明るく鮮明になったような気がした。
……ううん、きっと。
ナツくんの一言や笑顔次第で、わたしの世界は優しい光で包まれていく。
夕焼け色のような、甘酸っぱい光で。
最初で最後の、高校3年生という時間。
始まったばかりのその限られた時間の中で、今よりもずっとそばで、きみと一緒に笑い合えるようになれるといいな。
☆★☆
新学期が始まって、1週間。
教室やクラスメート、担任の先生が変わって、少しそわそわしながら始まったその日々にも少しずつ慣れてきていた。
ナツくんに1日中会うこともなく過ぎていく時間が、日常になっていく。そのことにもどかしさと寂しさが募っていくけれど、暗い気持ちでばかりもいられない。
だって、頑張るって決めたんだもん。
それに今日は、ナツくんと同じ選択科目の授業がある日。
遠くから見かけたりするんじゃなくて、まともに会える希望の時間。授業中は話せなくても、休み時間には少しは話せるはずだし、その機会を無駄にはしたくない。
そんな思いで、わたしは今朝から張り切っていた。
……のだけど。
「あ、平岡さん。久しぶりだね」
「ひ、久しぶりっ、ナツくん!」
選択科目の授業で使われる教室の前で、実際にナツくんと出くわしてみると。
久しぶりに間近でまともに見たその姿と笑顔が破壊力抜群で、緊張する胸を落ち着かせて平然を装うだけで精一杯だった。
頑張るとか、そんな余裕なんてない。