いつでも一番星


ただただ、緊張する。

ナツくんってこんなにもかっこよかったんだなぁって、近距離にいるナツくんを見上げながら思った。

会えない時間が想いを強くするっていうのは、本当なのかもしれない。

久しぶりに見る姿。そばで名前を呼んでくれる声。
ナツくんのすべてがいつも以上に特別で、笑いかけてくれるだけで、一生分の幸せを感じられたような気がする。

単純かもしれないけど、好きな人ってそれぐらい最強のパワーをわたしに与えてくれるんだ。


そんなわけで、幸せやら緊張やらで胸がいっぱいになっていたわたしは、到底ナツくんに積極的に話しかけられるような状況ではなくて。

久しぶりと告げるものの数秒の挨拶だけで終わり、それ以降は交わす言葉がなくなってしまった。

都合よくナツくんから話を振ってくれるなんていう奇跡も、もちろん起きるわけもなくて……。

わたしとは違って至って平常運転なナツくんは、そのまま颯爽と教室に入っていく。


「……」


なんか、わかってたことだけど。

わたしばかりが久しぶり会えたことを喜んでる現実を、ナツくんの平然とした態度から改めて突きつけられたような気がした。

一方通行の想いは行き場がなくて、わたしの中から出ることもできずに壁にぶつかっている。


グサグサと、突き刺さるような痛みが広がる。

でもそれに意識が完全に支配される前に、ナツくんの背中を追うように教室へと歩を運んだ。

こっ、こんなことでへこたれちゃダメだよね……!

まだまだ頑張ってないんだから、これから頑張らなきゃだし!


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