いつでも一番星
言い聞かせるように自分を励ましながら入った教室内を見渡すと、すでに20人程度の人がいた。みんな、同じ選択科目を受ける人たち。
同じクラスの人も何人かいて一応顔見知りの人もちらほらいるけれど、特に仲が良い人はいなかった。
この中でまだまともに話せるのは、ナツくんぐらいかもしれない。
そんなわたしと違ってナツくんは友達がいたのか、数人の男の子のところへ歩み寄っていく。
仲良さげにしているところへ割り込む勇気もなくて、何となく話しかけづらくなってしまった。
もしかすると今日はもう、話せるタイミングがないかも……って、ちょっと沈んだ気持ちになりながら、ナツくんから目を逸らした。
「……はぁ」
無意識のうちにため息をつきながら、適当に近くの席へと腰かける。
あらかじめ先生が用意していたのか、黒板には「座席は自由です」と書かれていたので、座ったのは廊下側から2列目の最後尾。
周りはみんな友達と固まって座っているから、自分だけ浮いているように思えてしまう。ちょっと寂しい。
でも、そんな気持ちを一瞬で吹き飛ばすみたいに、絶妙なタイミングでその声は降ってきた。
「隣、座ってもいい?」
自由席なのに、律儀に確認する声。
一瞬、自分に向けられたものだとわからなかった。それでもふと顔を上げて反応してしまったのは、耳が拾ったその声が、好きな人のものだったから。
左隣の机に左手をつきながら、窺うようにわたしを見ているナツくんと目が合う。そこでようやく、さっきの問いかけが自分宛てであることに気づいた。