いつでも一番星
「ありがとう。頑張る。……でも、さ」
「ん?」
がやがやと賑わっている、長い一本道の廊下。その真ん中の階段があるところ。
わたしはこのまま真っ直ぐ進み、ナツくんは階段を下るという分かれ道に差し掛かったとき、ふとナツくんが足を止める。
何か言葉を続けるような雰囲気だったから、その声を聞き逃さないようにと、ざわつく中でナツくんに意識を集中させた。
「……よかったら、観に来てよ」
耳に届いたのは、はっきりしていて、真摯な色を濃くした声。
「試合会場で、直接応援してほしい。平岡さんさえよければ、なんだけど」
真っ直ぐ、真っ直ぐ。
ナツくんがわたしを見ているから、目なんてほんのわずかも逸らせなくて。瞬きさえ忘れて、ただナツくんだけを瞳に映す。
……まさか、ナツくんからお誘いを受けるとは思ってもみなかったから驚いた。
友達だから? 観客がたくさんいた方が盛り上がるから?
たぶんそんな感じの理由なんだろうけど、直接声をかけてくれたことが嬉しかった。
「行くよ、もちろん! ナツくんにも声が届くように、たくさん応援するね!」
誘われていなくても、力一杯応援していたけど。
ナツくんが直接誘ってくれたのだから、もっともっと声を届けられるようにわたしも頑張るよ。
それが、少しでもきみの力になってくれるのなら。
「ありがとう、平岡さん。俺……すげー頑張れそう」
力強い意思を秘めた瞳をやわらかく細める。
その表情に胸が高鳴って、それを悟られないようにもう一度、頑張ってと声をかけた。
頑張って、頑張って。
わたしはいつでも、ナツくんのことを一番応援しているから。