いつでも一番星


1回表、ワンボールツーストライク。

走者が2塁という得点圏にいる中で、先ほど打たれた球はぐんぐん飛距離を伸ばす。

そして、わたしがいるここと対面するライト方向へ向かったそれは、ファウルボールになることもなく。
まるで最初から着地点はそこだと決めていたような衰えぬ勢いのまま、柵の向こうの芝生へと白い姿を下ろした。


「わああああ……っ!」


盛り上がった歓声に二重にも三重にも声が重なる。

少し耳が痛くなるようなその声と拍手の音の中で、わたしは驚きでぽかんと口を開けながらもしっかりと手を叩いて賞賛を送っていた。


「すごいね! 生でホームラン見たの初めてだよ!」

「ほんとすごい! あんなに飛ぶなんて!」


今にも席から立ち上がりそうな勢いで興奮した瞳をグラウンドへと向けるサトちゃんの言葉に、同じく興奮冷めやらぬままこくこくと頷いて答えた。

本当にすごいよ、横峰くん……!


先ほどのホームランを打った打者は、4番の横峰くんだった。

何の迷いもないような動きで初球に向かって振ったバットが、小気味良い音を鳴らして。それに相応しい爽快な軌道を青空に描いて、南田高校へ先制点をもたらしたんだ。

2塁の走者がホームインし、やがて横峰くんもベースを丁寧に踏んで帰ってくる。

迎える選手も横峰くんも、観客席にいるわたしたちも、みんなが晴れやかな笑顔をまとっていた。

観客席から飛ぶ応援の声も、さっきの興奮を残して盛り上がっている。


< 233 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop