いつでも一番星


すごいなぁ。初回の打席でいきなりホームランを打っちゃうなんて。

何かしらヒットを出せば1点が入るという場面で、自らもホームインして2点目を取りに行く。

それを思い通りにするのは、きっと簡単なことじゃない。それでも実現する横峰くんからは、4番としての責任というか、プライドのようなものを感じられた。


そしてその横峰くんの活躍は、選手たちの闘志をじりじりと刺激したようで。

ツーアウトランナーなしの状態で始まった次の打席からもどんどん走者を出し、最終的にはさらに2点追加したところで初回の攻撃を終えることができた。

4―0。

いい流れで、守備へと移る。


「あ、森山くん出てきたよ」


ダッグアウトから出てきたナツくんの姿を見て、サトちゃんはわたしを肘でついてくる。

わたしのナツくんへの想いを知っているから、いち早くその姿を見せてあげようという親切心で教えてくれたのだろう。

でもわたしの恋のレーダーはどうやらとても優秀なようで、サトちゃんがナツくんを認識するよりも先に、その姿に釘付けになっていた。


南田高校の選手がそれぞれ守備位置に向かって駆けていく。

その中のひとり、マウンドに綺麗な姿勢で立った彼を、サトちゃんに何かしら返事をするのも忘れて一心に見つめていた。

背番号1を背負って、堂々と現れたナツくんのことを。


「……」


言葉を失うって、きっとこういうことだ。


試合開始前の整列時にいつもより眼差しに力が入ったナツくんの姿をすでに見ていたはずなのに、それでも一瞬、別人だと思ってしまいそうになった。

それぐらい今視線の先にいるナツくんは、数十分前よりも士気を高めた独特なオーラを放っている。


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