いつでも一番星
文化祭の催しのために着ていたのと同じユニフォームを纏っているのに、試合に望むために身につけているとあのときよりも何百倍も神聖でかっこいい。
……これが、野球をするナツくんなんだ。
学校で練習しているときとも、バッティングセンターで遊んでいるときとも違う。
去年の秋季大会の新聞記事で紹介されていた写真のあの姿でさえない。
一番になることを目指して、日々増していく真剣で熱い思い。
そんな強い力がみなぎった心を抱えながらマウンドに立つリアルな姿を、わたしは今目の当たりにしている。
試合の興奮と好きな人の新たな一面への高揚が相まってどくどくと鼓動が早まる音を、全身で感じていた。
周りの歓声さえも意識から外れるほどに、耳はその音に支配される。
痛いほどに心臓が鳴り響くその最中、投球練習が終わった。
主審がコールし、ナツくんが構える。
ナツくん……頑張って。
膝の上でぎゅっと両手を握り締めた。
1回裏。
ナツくんがスムーズな動きで投げた初球。
わたしにはとても速いスピードに思えたそれは、おそらく狙ったとおりだったのだろう。真っ直ぐ迷いなく、キャッチャーのミットに収まった。
バッターはバットを振らなかったから、これでワンストライク。
見送ったのか、それとも手が出せなかったのか。打者の意図がわからないまま、ナツくんが2球目を投げる。
次は空振りだった。
「おー、なかなか鋭いところに投げるね森山くん。コントロールいいじゃん。見事にボール球を振らせてるよ」
「サトちゃん、そういうのわかるんだ? すごいね。わたしはさっぱりだよ……」
ナツくんの球を見るなり感心した様子で呟いたサトちゃんに、わたしが感心してしまった。