いつでも一番星
正直わたしは野球のことに、そこまで詳しくない。ルールはある程度わかっているつもりだけど、細かい専門用語が出たりすると混乱してしまう。
ストライクとかボールとかアウトの意味は知っているけれど、どこからどこまでがストライクゾーンなのかはちんぷんかんぷんだ。
打者から離れた全然違う方向に投げられたら、さすがにボールだとわかるけれど……。
おかげでナツくんの球がストライクか否かを知るためには、いちいち得点板に表示されるボールカウントのランプを確認しなければならなかった。
審判が何かしら動いて何か言ってるみたいだけど、マスクの下でくぐもった声は盛り上がる観客席には届かないし、残念ながらわたしには審判の動きの意味も理解できていない。
そんなわたしとは違い、サトちゃんは得点板には目もくれずに、投げられた球を見ただけで判断できているみたいだった。
しかもそれは確かなものらしく、サトちゃんの言葉と光るランプの位置が一致している。
「サトちゃんって、野球詳しかったっけ?」
「んー、そこまででもないよ。お父さんがよく野球中継を観てるから、いつしか覚えた程度だし」
「でも球を見ただけでストライクかどうかわかるのはすごいよ。わたしもそれなりに知ってる感じだけど、さすがにそれはわからないもん」
「そう? まあ、勘だけどね。テレビだとコースとボールカウントが一緒に表示されてるから、それ見て感覚的に覚えてる感じだし」
何てことないようにサトちゃんは言うけれど、やっぱりわたしにはすごいことで。
今度からはお父さんが観ているプロ野球のテレビ中継も、もっと熱心に観てみようと思った。