いつでも一番星


 ☆★☆



「やったー、勝ったよー!」

「勝ってよかったねー!」



2時間半を費やした試合は、6―1で南田高校の勝利となった。

両校選手がホームベースを挟んで整列し、一礼して握手を交わす。その姿に拍手を送りながら、サトちゃんと顔を見合わせて喜びの笑みを浮かべた。

やがて球場に南田高校の校歌が流れる。選手たちが元気に声を張り上げて斉唱する声を聞くわたしの頭の中は、今日の試合のことでいっぱいだった。

見たばかりの野球をしているナツくんの姿を忘れず心の奥に焼きつけるように、そっと目を閉じて今日見た光景を頭の中で振り返る。


6回が終わるまで相手に1点も与えず、その間に自分たちは2点追加して、南田高校はとても順調に試合の流れを掴み続けていた。

南地区の予選ではすべてコールドゲームで勝ち進んでいたし、この試合も同じように勝つだろうと思わず思わされるような試合展開だった。

最終的に7回裏で相手に1点を許してしまったけれど、ナツくんの投球を含め守備にエラーのようなものはなかったと思う。


……この試合、ナツくんはどう思ったのかな。

ナツくんは失点の回を最後にマウンドを降りたのだけど、その姿は心なしか暗い色を纏っているように見えた。それが少し、気がかりだった。

サトちゃんいわく投球に特に目立つ乱れはなかったらしく、たぶん今後の試合のことも考えての降板のようだけど……。

もしかしてナツくんには、何か引っ掛かるものがあったのかな。人一倍自分に厳しい面がある彼なら、この降板でわだかまりを感じてしまったかもしれない。

去年の秋、練習試合のあとにもとても気にかけていたし……。


< 239 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop