いつでも一番星


ナツくんの瞳が、わたしを映してくれる。

たったそれだけのことなのに、無性に特別な感じがして。さっきまでは呼ぶのを躊躇っていた名前を目一杯呼びたい衝動が、わたしの中を一瞬で駆け抜けた。

呼びたい、きみの名前を。今、ものすごく。


「なっ――」

「――夏樹くん!」


わたしの声が咄嗟にナツくんの名前を形作ろうとしたその瞬間、不意打ちで誰かの凛とした声が彼を呼んだ。

それは周りの声に埋もれるわけではなく、独立しているみたいにはっきりとわたしの耳に届いていた。

ナツくんにも同じように聞こえていたのか、視線がわたしから逸らされる。そのあとを追うように、わたしも声が聞こえてきた方へ目を向けた。


わたしが座っている場所の、左斜め前方。

観客席の中段に3人の女子がいるのを発見して、直感でその子たちのひとりが声の主だろうと思った。


「夏樹くん、お疲れさま! 次も頑張ってね!」


女子3人組の真ん中、ミディアムヘアーの子が口を開いている横顔が見えた。声はさっき聞いたものと同じ、聞き取りやすく響くものだった。

彼女からナツくんへ目を移す。ナツくんも声の主を見つけられたようで、まるで時が止まったように真っ直ぐ彼女を見ていた。

やがて、彼女の言葉に応えるように手を挙げながら緩く笑う。

その瞬間をありありと見てしまって、胸がちくりと痛んだ。

ナツくんがわたし以外の女子の声援に応えていても全然おかしくないことなのに、やけにざわざわと言い様のない濁ったものがわたしの中から湧き出てくるような嫌な感じがした。

さっきまでは喜んでいたわたしの中心部が、今は早鐘を打ってわたしを追い詰めてくる。

それから逃れたい一心で、目を合わせているふたりを視界から外した。


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