いつでも一番星
……何でだろう。
嫌な予感がして仕方ない。
普段からナツくんが人望を集めることも知っているし、今日だって応援に来ている他の女子たちがナツくんに声をかけている姿を嫌になるくらい目にしていた。
そのたびに一人前に妬いたり不安になったりしていて、今回もまた、わたしには呼べなかった名前を堂々と呼んだ彼女を羨ましく思ってしまったのだけど……。
今日一番、胸がざわついている。さっきの彼女とナツくんの光景も見慣れているようなものに違いないのに、今まで見てきた他の光景とは何かが違うように思えたんだ。
得たいの知れない何かがざらりと胸を撫でたみたいに心地が悪い。
やがてナツくんたち選手がベンチへと引き返し、徐々に観客も球場から去っていく。さっき出鼻をくじかれてしまったわたしは、結局最後までナツくんに呼びかけることができなかった。
チャンスはまだあったのかもしれない。でも、そういう気分になれなかった。
ナツくんのおかげで高まっていた気分も、今は何事もなかったように静まっている。
だけどわたしの心のずっと低い場所では、不安による小さな波だけが静かに寄せては引き返していた。
「混んでるから、もう少ししてから動こうか」
「そうだね。今行っても出るの苦労しそうだし」
観客席にいたたくさんの人が一気に動いたせいで、出入り口に繋がる通路はどこも混雑していてた。簡単には出られそうにない。
だからわたしとサトちゃんは、通路が空くまで席に座ったまま待つことにした。