いつでも一番星


その暇な時間、ふと出入り口に向かう列の中にさっきのミディアムヘアーの女子を見つけて、そのすらりとしたモデル体型の後ろ姿をぼんやりと追いかけていた。


……何が、違うんだろう。

何が一体わたしにそう感じさせるのだろう……としばらく考えた末に、些細とも呼べるけど確かな違いに、わたしは今になって気づいてしまった。


そうだ、名前だ。

あの女の子、ナツくんのことを“夏樹くん”って呼んでいたんだ。


普段からみんなナツくんのことを、“ナツ”や“ナツくん”、はたまた名字で呼んだりしている。

ニックネームではない下の名前で呼ばれているところを、わたしは今まで一度も聞いたことがなかった。

だからこそ、違うと感じたのかもしれない。珍しさがある分だけ、その呼び方に特別な意味があるように思えたから……。


「……」


――彼女はナツくんにとって、身近な人なのかもしれない。

もしかすると親戚って可能性もあるけれど、ふたりの視線が交わったときにわずかに揺れた空気がそうではないことを、女の勘が悟っていた。


もう一度彼女を見ようとそちらを見たけれど、すでに列は進んでそこにあの女の子の姿はなかった。

全身を、嫌なくすぐったさが巡っている。

まるでわたしに危機を知らせているように、それはしばらく経ってもわたしの中に残ったままだった。




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