いつでも一番星
あの子
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それは、1時間目が終わったあとの休み時間のことだった。
「平岡さん」
廊下側にある自分の席で次の授業の教科書を準備していたら、ふと胸をふわふわと舞い上がらせる声に呼ばれた。
慌てて机の中を探っていた手を止めて顔を上げると、座っていた私の右隣にナツくんが立っていた。
正確には、廊下側の窓越しにだけれど。
廊下側の壁に取り付けられているその連窓は風通しをよくするために開けっ放しにされている。
そのサッシに軽く手を置き、ナツくんは廊下からわたしと目を合わせた。
「な、ナツくん! おはよう!」
「うん、おはよう」
今日はナツくんと同じ選択科目の授業があるわけでもなく、本来なら一度も会えずに終わってしまうような日だった。
それなのに会えたことが嬉しくて、わたしは上擦った声で挨拶をする。
その緊張が露わになった様子にナツくんはふっと口角を上げながらも、ナツくんは目を合わせて挨拶を返してくれた。
ちゃんと人の目を見て会話をしてくれる、そんな些細な仕草が好きだなぁと、ドキドキし始めた胸の音を聞きながらまじまじと思った。
「あのさ、唯斗どこに行ったか知ってる?」
「え? 横峰くん?」
ナツくんが1組の教室内を見渡してからそう尋ねてくる。
わたしも同じように横峰くんの姿を探すけれど、どうやら不在のようだ。残念ながら、どこに行ったのか見当もつかない。
「ごめんね。ちょっとわからない」
「……そっか、それは困ったな」
しゅんとなって綺麗な山なりの眉を下げる姿を見て、力になれないことを申し訳なく思う。その一方で、勝手に落ち込んでいる自分もいた。