いつでも一番星
待つというのは、どうやらこの場でらしい。
少し屈んだ体勢になったナツくんの下がった視線がさっきまでよりもそばにあって、ひとりどぎまぎしてしまう。
心臓の音、どうか聞こえませんように。
「昨日、試合観に来てくれてありがとう」
ふと思い出したように、それでも相変わらずきちんと目を合わせて話すナツくんに、今とても白旗を揚げたい気分だった。
こんな至近距離ではっきりと見つめられると、さすがに赤面していることがばれそうだから。
おまけに無意識と思われる微笑も好きな人に向けられたというだけでぐんと破壊力を増してわたしの目に飛び込んでくるから、内心が忙しなくてすぐに言葉を返すことができない。
こくりと、ぎこちなく頷いて見せるのが精一杯だった。
野球部の春季大会の試合を観戦したのは、まだ昨日のこと。
学校で会ったらおめでとうとか、何かしら言葉をかけたいなと思っていたけど、予想以上に早く会う機会に恵まれたものだから逆に困ってしまった。
しかも、ナツくんの方からお礼を言われてしまった。
前もって何も準備できていなかった中、必死に言葉を脳内でまとめる。
「あのっ、すごく楽しかった! 勝ててわたしも嬉しかったよ、おめでとう!」
「ありがとう。まあ、まだ1勝なんだけど……。でも、楽しんでもらえたならほんとよかった。誘ったけど、つまらない思いさせてたらなら申し訳ないなって、ちょっと心配してたんだ」
気にかけているようなナツくんに、ぶんぶんと首を振って否定した。