いつでも一番星


「そんなことないよ! 最初から最後まで、ずっと楽しかったもん。ナツくんたちが頑張っている姿を見たらわたしも目一杯応援頑張ろうって気持ちになったし、球場でみんなで一丸となって応援してるのもすごく楽しかったよ」


選手たちのかけ声、砂埃を上げて走る姿。ボールがミットに収まる音、重なり響き渡る声援。

実際に生で試合観戦をしない限り、あんなにも間近に見たり感じたりできなかった。

知らなかったものを知ることができたような、とてもいい時間だった。観に行って本当によかったと思ってる。


「誘ってくれて、ありがとう」


提案してくれた茉理ちゃんにもだけど、ナツくんにもこのお礼は伝えたかった。

ナツくんからの直接的なお誘いは、尻込みしがちなわたしの背中を押す効果を十分持っていたから。


「試合を生で観るの初めてだったんだけど、行ってよかったって思えたよ。野球をやってるナツくんたちがその、すごくかっこよかったし……今までよりわたしも野球が好きになったような気がする!」


素直な気持ちを伝えるのは、どうしても恥ずかしさが伴ってくる。

思わずかっこよかったなんて言ってしまったけれど、変にわたしの想いに感付かれてしまわないないかとか、それで引かれてしまわないかとあとからやけに不安になった。

だけどわたしの心配を余所に、ナツくんは大人びた顔で悠々と笑いかけてくる。

……気のせいかな。わたしにそれが、照れ隠しの笑みのようにも見えた。

わたしの都合のいい解釈なら、恥ずかしさで消えたくなるような勘違いだけど……。


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