いつでも一番星
本人は自信たっぷりな様子だけど、ナツくんの態度を見る限りこういうことはよくあることなのかもしれない。
そしてそのたびにナツくんがその尻拭いをしているということは、ふたりの様子から何となく想像することができた。
二重で忘れていた彼がどうか三重でまで忘れてしまいませんようにと、そばで話を聞いていたわたしは密かに祈っておいた。
「じゃあ、俺行くから。……平岡さん、またね」
「うん、またね!」
去り際、すっかり気を抜いていたところでナツくんに再度声をかけられて戸惑った。それでも何とか、珍しくスムーズに声は出たほうだと思う。
長い廊下を進んでいくすらりとした後ろ姿を窓から少し顔を出して見送っていると、ふと、横峰くんがじっとわたしを見ていることに気づいた。
さっきまでナツくんがいた窓越しの廊下に立ったまま、何やら観察するみたいな目を向けられている。
「ど、どうかした?」
「んー、ちょっとな。わかりやすいなーって思って」
「えっ、なんのこと?」
よくわからない発言に聞き返すけど、横峰くんはにんまりと含み笑いをして「別に大したことじゃないよ」とはぐらかすように言うだけだった。
そしてちょうど鳴った休み時間終了の鐘の音の流れに任せて、廊下から教室の自分の席へと戻っていく。
さっきの、何だったんだろう……。
意味深に聞こえるように濁された横峰くんの言葉がやけに気になって、わたしはその背中を追いながら小さく首を傾げていた。