いつでも一番星
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あっ……と、声にならずに空気だけが唇から漏れた。
それと同時にどくんと嫌な響きで心臓が強く鳴り、瞬く間に全身に広がっていく。耳元でいやに早く大きく、そのこだまする音が聞こえていた。
まるで警告音のようなそれから逃れたいと思うのに、それでも目は、こうなってしまった原因をいつまでも見続けてしまう。
ナツくんと……先日球場で見かけたあの子が、ふたりきりで話している姿を。
こんなことなら、飲み物なんて買いに来るんじゃなかった……。
昼食を食べ終えて余った、昼休みの残り時間。
ふと思い立って自販機がある校舎の1階へ向かうその途中、こうやってふたりを目撃してしまったものだから、数分前の自分をすごく叱りたくなった。
わたしが通ろうと思っていた渡り廊下の先にいるふたりからようやく目を逸らして、白い床にため息を落とす。
財布を持つ手をいつしかきつく握り締めていたようで、うっすらと汗ばんでいた。
ナツくんに恋してからずっと、大勢の中や遠くにいてもすぐにナツくんを見つけられる自分の目の優秀さを、少し誇らしくさえ思っていた。
どこにいても一番にナツくんが目に入ってくることが嬉しかった。
でもときどき、その特技がどうしようもなくつらくなるんだ。
だっていつでも一番にナツくんを見つけられるといっても必ずひとりでいるわけじゃないし、今みたいに、女の子と仲良く話してる姿までいちいち目の当たりしてしまうから。