いつでも一番星


特に今日は憂鬱だった。

正確に言うとそれは今日だけじゃなくて、ここ最近ずっとのことなんだけど……。

実はここ数日、毎日見かけているんだ。

廊下や中庭、ときには昇降口などで、ふたりきりで談笑しているナツくんとあの子の姿を。


嫌な予感ほど、よく当たってしまうようで。

あの日球場でナツくんの名前を親しげに呼んでいたあの子は、やっぱりナツくんと仲が良かったらしい。

直接聞いたわけでもなく見かけるだけだから、ふたりがいつからどんな仲なのか詳しいことはわからないまま。だけどあの子が同じ学校の生徒ってことだけはすぐに知ることになった。

だって練習試合があった翌日から、たびたび校内でナツくんに声をかけている姿を見かけるようになったから。


以前見かけたとき、あの子の上履きのスリッパは赤色だった。1年生の指定色。

同級生ではない知り合い。

ナツくんは人に好かれやすい天性で、なおかつ分け隔てなく人と接する性格で自然と誰にでも慕われているから、幅広い交流の中で下級生と親しくなるのも不自然ではないだろう。

それでもやっぱり……気になってしまう。

文化祭やバレンタイン、それにこの前の試合観戦で幾度となくナツくんの人望の厚さを目の当たりにしてきたというのに、今まで以上に妬いてしまう自分がいる。


ミルクチョコレートのような滑らかな茶色のミディアムヘアーに、“夏樹くん”と親しみがある感じでナツくんを呼ぶ凛とした声、淡く染まっているように見える愛嬌のある笑顔。

あの子の可愛らしさやナツくんとの親密さが、無性にわたしの胸をざわつかせるんだ。


< 253 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop