いつでも一番星


そう感じる一因は、ナツくんのあの子への態度にもあった。

以前聞いてしまったんだ。ナツくんがあの子のことを“京香”と呼び捨てにしているところを。

普段、女の子の名前を呼び捨てになんてしていないのに。どれだけ親しくしている同級生の女子たちも、中学からの仲で野球部のマネージャーをしている茉理ちゃんのことさえ名字でしか呼んでいないのに。

それなのに、あの子だけ違う。嫌な予感しか感じていないわたしには、それがとても特別なことのように思えてしまう。


「……っ」


ついさっき見てしまった、ナツくんの笑顔が頭から離れてくれない。

あの子を真っ直ぐ見つめる、やわらかく綻んだ人懐こい笑み。あの子の下の名前を呼ぶ声が、甘い色を宿しているようで……。

わたしの心を凍てつかせる。

ナツくんの友達という立ち位置にいるわたしとは違い、あの子は特別なのだと、嫌でも本能が感じ取ってしまう。

あまり考えたくないけれど……あの子は、ナツくんの彼女だったりするのかな。

わたしが知らないだけで、ナツくんにそういう特別な存在がいてもおかしくない。

ホワイトデーにお返しをもらった頃は、茉理ちゃん情報によると付き合っている人はいないようだった。

でも、時間は日々進んでいる。

下級生のあの子が4月に入学してきて出会い、最近付き合い始めたということも十分あり得る。

練習試合の観戦にも来ていたし、あれもやっぱりナツくんが誘っていたのかもしれない。

友達止まりのわたしとは違って、彼女として……。


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