いつでも一番星
「……嫌、だなぁ」
確信はないけれどそう思える判断材料が多すぎて、ナツくんを想う心がえぐられる。
そのはずみのように、ぽつりと自分本意な本音がこぼれてしまった。
好きな人が誰かと特別な関係になる。
そんな好きな人の幸せを願いたい思いだって頭の中にはあるはずなのに、どうしても弱った心は素直にそれを受け入れられない。
わたしがナツくんのそばにいられる特別な存在でありたいって、どうしようもないくらい思ってしまうんだ。
……と、自分の奥底にある本心が顔を出してきたそのとき。
「そりゃあ好きな人が女の子と仲良さげに話してるところ見ちゃったら、嫌にもなるだろうな」
「……っ!?」
いつからそこにいたのだろう。
一人言のつもりだった呟きを聞かれてしまっていたようで、すぐそばから聞こえた誰かの声に心臓が飛び上がった。
慌てて振り向き、そこにいた人物がよく知っている顔だったから、余計に驚いてしまう。
財布を握り締めていた手をばくばく鳴ったままの胸の前で抱え込み、震える唇をどうにか動かした。
「……横峰くん……」
わたしが存在を確認するように名前を呼んでも、横峰くんは何も反応しない。
ただ、制服のスラックスのポケットに手を入れて、何か思案しているような顔でじっと前方を見つめていた。
ナツくんとあの子がいる、渡り廊下の先を。
……ていうか、ちょっと待って。
横峰くん今、好きな人がどうとかって言わなかった?
声をかけられたことに驚いて一瞬聞き流してしまったけれど、よくよく考えたら突っ込みどころが多すぎる。まるで、わたしのナツくんへの想いを知っているみたいな口振りだったのだから。