いつでも一番星


わたしは茉理ちゃんとサトちゃんにしか、ナツくんが好きなことを話していない。ふたりがそれを他人に言いふらしたとも思えない。

……それなのに。

どうして横峰くんは、知っているの?


わたしの思い過ごしかなと思いそうにもなったけど、相変わらず横峰くんの視線は意味深に例のふたりに向いていて。

さっきの一人言へのコメント内容も考慮すると、わたしが憂鬱な気持ちでナツくんたちを見ていたことがばれている可能性は、どうしても拭いきれなかった。


「な、なんで、横峰くんが……」


途端、知らぬ間に恋心を知られていたことを改めてはっきりと認識して、恥ずかしさで急速に胸の内が熱くなる。

でもその熱は一瞬のうちに、まずいと危機を察した頭によって打ち消された。血の気が引いて、体感的にも身体が冷えていくのを感じる。

いつから、気づかれていたの?
わたし、そんなにわかりやすいってこと?
それなら、ナツくんにも知られている可能性があるの?

ぐるぐると、疑問が頭の中を駆け巡る。

青ざめているであろう顔のまま唇をわなわなとさせていると、ようやく横峰くんがそんなわたしを見た。

そしてふとおかしそうに、どこか気の毒なものを見るような憐れみを含んだ表情で言った。


「そんなこの世の終わりみたいな顔しなくても」

「いや、だって、あの、えっと……」

「とりあえず落ち着こうか、平岡ちゃん。たぶん、平岡ちゃんが今一番心配してるのはナツに自分の気持ちがばれてるのかってことだろうけど、それなら全然ばれてねーから安心して大丈夫だよ」

「……」


……この人、超能力でもあるのかな。

見事に当てられてしまって、ぐうの音も出ない。


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