いつでも一番星
……でも、とりあえずはよかったって思えた。
まだ完全には心は落ち着きを取り戻せていないけど、わたしにとっての最悪なパターンを回避できていることを知れたら、少しは胸を撫で下ろすことができた。
残る問題は、目の前の彼だ。
今まで黙ってくれていたからたぶん大丈夫だと思うけど、一応ナツくんにはわたしの気持ちを内緒にしてって頼んでおいた方がいいのかな。
横峰くんにはいつの間にばれてしまったのか、それもとても気になるし……。
「……あの、横峰くん……」
「あ、そうだ。平岡ちゃんさー、喉渇いてない?」
この際だからいろいろ聞いてしまおうと意を決して口を開いたのだけど、あいにく横峰くんの何かをひらめいたような問いかけに遮られてしまった。
この流れにはあまり合っていないように思えるそれに、きょとんとしてしまう。
「喉なら、渇いてるけど……」
一応、飲み物を買うつもりで教室を出たのだ。
途中で予期せぬふたりを目撃してしまったせいで当初の目的を果たす気分ではすっかりなくなってしまっていたけど、言われて意識すると喉が渇いているように思う。変に緊張したりして気持ちが忙しなかったうちに、余計に口の中から水分が消えていったみたいだ。
「じゃあ、どっかでなんか飲みながらちょっと話さない? まだ、昼休みも余ってることだしさ」
スマホで時間を確認しながら、横峰くんが渡り廊下とは逆方向を指差す。
その目付きが何か大事な話があるとも言いたげな物言わせぬ強引さを秘めているように感じて、わたしは引き寄せられるように黙って頷いた。
そしてさっそく歩き出した横峰くんの背中を追いかけながら、これから聞くことになる話の内容に緊張と不安を覚えていた。