いつでも一番星
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ガコン、と。
缶ジュースが自動販売機から生み落とされる。
取り出し口からよく冷えているであろうその缶を手に取ると、さっそくプルタブを開けて横峰くんは飲み出した。
それからふと、先に買わせてもらった缶ジュースを持ったまま固まっていたわたしを不思議そうに見る。
「平岡ちゃん、飲まねーの?」
「の、飲んでるよ、ちゃんと」
慌ててそう返しながら、缶に口をつける。オレンジジュースの酸味が、いつまでも舌に残った。
横峰くんに従ってやって来たのは、学校の裏手にある自販機の前だった。
当初わたしが行こうとしていた校舎付近のものではなくて、裏門のそばにひっそりと存在している自販機。
あまり品揃えが豊富とは言えなくて、いつも好んで買っているメーカーのジュースはなかった。
買ったばかりのオレンジジュースは果汁100%ではなくて味が薄い。そのくせ、後味がやけに酸っぱい。
だから飲むのを渋っていたってわけじゃないけど、それでも横峰くんに言われるまで、あまり飲んでいなかったのは確かだ。
ここに来るまでは喉が渇いていたはずなのに、いつ横峰くんが切り出すのだろうと考えていたら、悠長に飲んでいる気分にはなれなかった。
それでも何とか、ちびちびと口内にオレンジジュースを流し続ける。
「……で? 平岡ちゃんは、なにを聞きたい?」
空になった缶を自販機の横のごみ箱に捨てて、横峰くんが口火を切った。
でもそれはわたしが身構えながら予測していたものとは微妙にずれていて、まだ半分ほど中身が残ったままの缶を握り締めたまま反応に困ってしまう。