いつでも一番星
夜空には、さっきよりもさらに光が増えていた。
今見えている星のどれかは必ず最初に現れていたはずなのに、もうどれがそうだったのかなんてわからない。
「見たかったなぁ、一番星」
暗くなり始めた空で、唯一輝く星。
そんな一番星も、周りに別の光が現れたら輝きが弱まったみたいに存在が薄くなる。
当たり前だけど、一番星が目立っていられるのは最初に空に浮かんだときだけなんだ。
見えているはずなのに、見る時間や見る人によっては一番星だと気づいてもらえない。
そんなことを考えると、一番星が急に寂しい存在に思えた。
「雫ちゃんは今まで、最高でどれぐらい一番星に祈れたの?」
「うーん、確か3日だったかなぁ」
「3日!? たったそれだけなの?」
「だから言ったでしょう? 意外と難しいって。日没する頃には空を見るようにしてても、ふとした瞬間に2つ目の星が出てたりしてるんだもん。今日みたいに、見逃す日の方が多いよ」
「なるほどね~。狙っても難しいとか、さすが迷信っぽい」
サトちゃんはわたしの話の難しさをようやく理解したみたいで、納得したように何度も頷いていた。
「……それで? 雫ちゃんの願い事ってなんなの?」
「へっ? わたしの願い事?」
「そうだよ。一番星に祈ってるってことは、叶えたい願いがあるってことでしょう?」
サトちゃんの質問に固まってしまった。……何も答えられなくて。
そんなわたしを見て察したらしく、サトちゃんは怪訝そうに眉を寄せた。