いつでも一番星
上から下に、縦に真っ直ぐ。
そんなむらがない消し方を見ていると、自分が適当に消したところがとても汚く見えた。
雑な自分が恥ずかしくなって、慌ててナツくんみたいに一定方向に黒板消しを動かす。
するとたちまち綺麗な緑色が現れて、ここでもまたナツくんの真っ直ぐさに触れたような気がした。
だけど、それにうっとりしているのも束の間。
ナツくん同様に黒板を消し始めて、ひとつ気づいたことがある。
わたし、この消し方だと、黒板の上の方に手が届かないよ……。
見上げた黒板上部には、まだたくさん残っている文字。
背が高いナツくんはさっき、同じ高さに書かれている文字も楽々上から消していたけど。
やや平均身長以下のわたしでは、同じように消そうと思っても、さすがにあそこには手が届かない。
えいっとジャンプして挑戦してみるけど、消えるどころかかすったせいで逆に文字が乱れてしまった。
綺麗に消したかったはずなのに、余計汚くしちゃうなんて……。
逆効果すぎて、最悪だ。
おまけに無理矢理消そうとしたときの衝動で、チョークの粉があたりに舞ってしまっている。
わたしの頭やカーディガンに降り積もるそれに、コホンコホンとむせた。
「平岡さん、大丈夫?」
すぐそばで優しい声が聞こえた。
舞い散る粉で痛くなった目をこすりながらその方向を見ると、間近にナツくんが来ている。
その距離にどぎまぎするけど、勢いよく顔の前で手を横に振りながら答えた。