いつでも一番星


上から下に、縦に真っ直ぐ。
そんなむらがない消し方を見ていると、自分が適当に消したところがとても汚く見えた。

雑な自分が恥ずかしくなって、慌ててナツくんみたいに一定方向に黒板消しを動かす。

するとたちまち綺麗な緑色が現れて、ここでもまたナツくんの真っ直ぐさに触れたような気がした。

だけど、それにうっとりしているのも束の間。

ナツくん同様に黒板を消し始めて、ひとつ気づいたことがある。

わたし、この消し方だと、黒板の上の方に手が届かないよ……。


見上げた黒板上部には、まだたくさん残っている文字。

背が高いナツくんはさっき、同じ高さに書かれている文字も楽々上から消していたけど。
やや平均身長以下のわたしでは、同じように消そうと思っても、さすがにあそこには手が届かない。

えいっとジャンプして挑戦してみるけど、消えるどころかかすったせいで逆に文字が乱れてしまった。

綺麗に消したかったはずなのに、余計汚くしちゃうなんて……。

逆効果すぎて、最悪だ。

おまけに無理矢理消そうとしたときの衝動で、チョークの粉があたりに舞ってしまっている。

わたしの頭やカーディガンに降り積もるそれに、コホンコホンとむせた。


「平岡さん、大丈夫?」


すぐそばで優しい声が聞こえた。

舞い散る粉で痛くなった目をこすりながらその方向を見ると、間近にナツくんが来ている。

その距離にどぎまぎするけど、勢いよく顔の前で手を横に振りながら答えた。


< 31 / 267 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop