いつでも一番星
「あっ、うん! 大丈夫だよ、なんとか!」
うわー、さっきの見られてたんだ。
おっちょこちょいな行動を知られたかと思うと、気恥ずかしさでついつい早口になってしまった。
身体についた粉を払うついでに俯く。
すると、ふと。
前髪に、長い指が触れてきた。
……え、なに?
「髪の毛にも、チョークついてるよ」
驚いて顔を上げたわたしの前髪を撫でるように、ナツくんの指が往復した。
片手に黒板消しというまぬけにも思える格好のまま、一瞬で身体が硬直する。
ぱちぱちと瞬きをする早さにあわせて、心臓の音も早くなったような気がした。
敏感になった神経はまるで、髪の毛にまで張り巡らされているみたい。
だってナツくんが触れたところが熱くて、それが全身に広がっていくみたいなんだもん。
きっとその熱の色は、顔にも出ちゃってるよ……。
「うん、これでよしっと。平岡さん、届かないみたいだから、上の方は俺が消しとくね」
「あっ、……ありがとう」
チョークのことと、消してくれること。
その両方への感謝の言葉のつもりだったのだけど、ちゃんと伝わったかな?
笑ってくれたような気がするから、きっと伝わったよね。
わたしが消せずに苦労した箇所を、ナツくんは特に腕を伸ばす必要もなく軽々と消していった。
代わりにわたしは下の方で消し損ねていたところを、整えるように黒板消しを滑らせる。
相変わらずナツくんのすぐ隣に立っているだけでも緊張しっぱなしだけど、それでも。
近くでナツくんに関わることも悪くないなぁ、なんて。
ついさっきのぬくもりを噛みしめながら、少しだけ思った。