いつでも一番星


……あんなこと言うなんて、ちょっと意外だったかも。

ナツくんの背中を見つめ、黒板に向かいながらそんなことを思った。

ナツくんとは会話らしい会話をしたことがあまりないから、知らなかったなぁ。

あんなふうに、人のことをからかったりもするなんて。しかも、優しく笑いながら。

だけど、あの笑みがあるからこそ、嫌味らしさは感じなかったんだろう。

おかげでからかわれたというのに、全然嫌な気持ちにはならなかった。変な感じ。

……まあ、恥ずかしかったのは難だけど。


「全員、問題集出したー?」


黒板前に着いて振り返ると、ナツくんは自分の席で問題集を集めていた。
ご丁寧にみんなに声をかけて、冊数まで数えている。

……たとえ、知らないような、どんな一面があっても。
ナツくんは根本的に優しいってことには変わりないなぁ、って。

ひとりで問題集を抱えて行ってくれたナツくんの姿を見て、温かい気持ちになった。


さて、わたしも黒板消さなくちゃ!

進んでいく時計の針に急かされながら意気込む。

でもひとりで黒板を消すのは、思っていたよりも大変だった。案の定、上の方は届かないし。

だけど、思わぬ助け船が現れた。


「雫、上の方は手伝うよ」

「茉理ちゃん! ありがとー」


もう1個の黒板消しを手にすると、茉理ちゃんはわたしが消せずに困っていた箇所をさっそく消していく。

ナツくんよりは低くてもわたしよりは断然背が高い茉理ちゃんは、背伸びをして上から黒板消しを滑らせた。

黒板に擦れて、キュッキュッと音が鳴る。
その音に重ねられた茉理ちゃんの声は楽しそうだった。


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