いつでも一番星
「今日、なんかいい感じだね!」
「ん? なにが?」
「雫とナツだよ! さっきといい、今朝といい、ふたりともすごくいい雰囲気で話してたじゃん!」
茉理ちゃんの言葉に、つま先立ちをした状態から倒れそうになった。驚きすぎて。
お、恐ろしいよこの子……!
わたしとナツくんの行動を、しっかり見て把握してるなんて!
だけど茉理ちゃんは、肝心な部分を盛大に勘違いしている。
無事に黒板を消す作業を終えたところで苦笑を返した。
「全然いい雰囲気とかじゃないよ? わたし、ナツくんの前でどじ踏んでばかりだし」
それは思い返すと、今日だけの話ではなかった。
昨日はカバンのチャックの閉め忘れ。
おとといは授業中に開けたままにしていたペンケースを机から落として、派手に中身をぶちまけた。おまけにペンを拾うのを、ナツくんに手伝ってもらっている。
……なんか、わたし。
記憶を探ると、結構ナツくんの前でへまばかりしてるよ。
ナツくんの前でいい格好ばかりしていたいわけじゃない。
だけどやっぱり憧れの人には、恥ずかしい姿はできるだけ見せたくない。
じゃあ、せめてもう少し、いいところを見せられるように努力すればいいのかな?
そんな考えにたどり着く。
でも、わたしのいいところってなんだろう。
ピンとくるようなものはすぐに出てこない。
ナツくんに見せられるようなもの、と考えると、余計に考えは頭の底に沈んでいった。