いつでも一番星
「いやー、あたしが見る限りではいい雰囲気だったよ。ナツって大体の人と笑いながら話すけど、あんなふうに笑ってるのを見たのは初めてだし。あれはもしかすると……って、なに難しい顔してるの?」
「ねぇ、ナツくんにいいところ見せるにはどうしたらいいかな?」
「はい……?」
自席に戻るなり、ひとりでは答えが出なかった疑問を、左斜め前の席に着いた茉理ちゃんに投げかける。
すると思いきり顔をしかめられた。
「いきなりどしたの? ていうか、さっきのあたしの話聞いてたー?」
「あー、ごめんね。聞いてなかった。……で、いいところを見せるにはどうしたらいいと思う?」
「あたしの話は聞き直すつもりないのね……。まあ、いいけどさ。てか、いいところなんて見せようと思って見せられるものじゃないよ。むしろ、逆効果にもなるかもしれないし」
「そうなの?」
尋ねてから、時間を確認した。
ホームルームまであと1分。
ナツくんがまだ帰ってきていないことを気にしながらも、茉理ちゃんの声に集中する。
「だっていいところなんて、人によって見え方が違うでしょ? 雫が自分の長所だって思ってることも、他人から見たらいいところとは思えないかもしれない。逆に長所だと思ってないことが、他人から見たらいいところって思えるかもしれないしね」
「ああ、なるほどね……」
「つまりさ、いいところを見せたいからって変に力んだらダメってこと。素のままで、そのままの雫でいいの。そうすればいいところなんて、自然と気づいてもらえるよ」
素のまま、そのまま。
そう言われると、胸の奥の方からじわじわと温かいものが滲み出てくるような気がした。