いつでも一番星
「いえいえ、わたしの方こそありがとう。無事に間に合って、本当によかった」
ありきたりな言葉に、精一杯の感謝の気持ちをこめる。
自ら大変な方の仕事を引き受けてくれて、本当にありがとうって気持ちを。
ナツくんは丸い瞳を細めて笑うと、先生が来たことに気づいてすぐに前を向いた。
そしてすぐにホームルームが始まる。
……なんか、早い1日だったなぁ。
ナツくんの背中を見ながら、今日1日の日直の仕事を思い出した。
今朝は緊張しちゃうと思って困惑もしたけど、途中でへまもしちゃったけど、なんとかこの時間までやり遂げてきた。
ナツくんの優しさに助けてもらいながら。
ナツくんともだいぶ自然に話せるようになってきたし、充実した1日だった気がする。
仕事もあとは、日誌を書くだけだ。
ナツくんとの共同作業もあとひとつだけだと思うと、少し残念で寂しい。
……わたし、どんどんわがままになってる気がするよ。
遠くから眺めてるだけで、十分だったはずなのに。
そばで触れる優しさを、もっと感じていたいって思ってしまっている。
自分の前髪を、ナツくんに触れられたときのように撫でた。
それだけで熱がこみ上げてきてドキドキしちゃうなんて……わたし、相当重症みたいだ。
☆★☆
「唯斗と沢谷、悪いけど先に部活行って監督に伝えといて。俺が日直の仕事で遅れるってこと」
ホームルームが終わって、まだざわついている教室。
ナツくんは席に着いたまま、準備をして立ち上がった横峰くんと茉理ちゃんにそう声をかけた。
それに素早く反応したのは茉理ちゃんだった。
わたしとナツくんの顔を交互に見て、意味深な笑みを浮かべている。