いつでも一番星


ひとりで全部の記入箇所を埋めてしまいそうなナツくんに、慌てて声をかける。


「あっ、あの! わたしも書くから、途中で交代してね? 全部書いてもらうのは悪いし」

「んー、そう? じゃあ、俺はここまで書くから、平岡さんはこっちを書いてくれる?」

「うん、わかった」


ナツくんは一部の記入欄を指差しながら分担を説明すると、素早く何ヵ所にも書き込んでから、わたしの方に日誌を向けてくれた。

空欄なのは、今日の時間割表のところだけ。

欠席者の名前や連絡事項、今日の仕事の反省点など、他のところはすべてナツくんが書いてくれてあった。

何も言わずに自分の分担を多くする優しさが、ナツくんらしいような気もした。

ありがとう。
そう言って、向けられた日誌を手前に引き寄せる。


さっそく時間割表に、6時間分の科目とその授業内容を書き始めた。

でもその最中、じーっと手元を見つめてくるナツくんの視線に気づいて、なかなか集中することができない。

一度は落ち着きを取り戻していたはずの心臓が、あっけなく冷静さを失っていく。

あんまり、見ないでほしいなぁ……。

わたしの心の声は、もちろんナツくんには届かない。

だからナツくんの視線が逸らされることはなくて、緊張だけが高まっていく。

シャーペンを持つ手の内側に汗が滲み、細めの芯がつづる文字が次第に震えてきた。

その結果、頼りない芯がポキッと軽快な音を立てて折れた。

うわ、動揺してるのナツくんにもバレちゃうよ……。


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