いつでも一番星


「平岡さんって、綺麗な字で書くんだね」


カチッ。

動揺したまま慌ててシャーペンの頭を押したところで、いきなりそんなことを言われる。

一瞬思考が追いつけなくて、何の話なのかわからなかった。

でも瞬きを数回繰り返したあと、ゆっくりと言葉の意味を理解する。

すると、さっきまでナツくんがやけに手元を見ていた理由までわかったような気がした。


「そっ、そうかな? でも、綺麗って言ってくれてありがとう。わたしはナツくんの字も、すごく綺麗だと思うよ」


それは褒められたお返しとして出てきた言葉ではなくて、本当に思っていたことだった。

わたしの細くて弱々しく見える字とは違う、ナツくんの濃くはっきりとした字。

先に日誌に記入されていた字はどれもバランスがよくて、ナツくんの真っ直ぐな姿勢を彷彿させるものだった。

ただ力強いだけじゃなく、真っ直ぐさを感じさせる字は、わたしのものよりもずっとずっと綺麗に見える。


「そう? 自分では汚いと思ってるから、そう言われると結構嬉しいかも。つうか、褒めてくれたのは平岡さんが初めてだよ。ありがとう」


ナツくんは目を細めて、照れくさそうに笑った。
レアな笑顔に、わたしの心がくすぐられる。

おまけに字を最初に褒めたからこそナツくんがこんな反応をしてくれたんだと考えると、その笑顔がとても貴重に思えた。

なんだか……すごく嬉しいな。

ナツくんのこんな一面まで見られるなんて。しかも、ふたりきりのときに。


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