いつでも一番星
放課後に入って20分が経った教室には、わたしとナツくんしか残っていなかった。
だからナツくんのこの表情を見ているのは、紛れもなくわたしだけ。
またそんな特別感に気づくと、ナツくんの前だというのに、喜びすぎてこぼれた笑みを隠しきれない。
頑張って手を動かしながら、俯いて顔を隠すのが大変だった。
でもおかげでずっと下を向いていることになったから、日誌を書く作業ははかどった。
時間割表を埋めたあと、一息を入れる。
それから内容の確認に移ると、ページの右下にまだ空欄が残っていたことに気づいた。
それは日直担当者の名前を書く欄だった。
「ナツくんの名前も書いておくね」
「あっ、そこ書き忘れてたんだ。ありがとー」
ささっと慣れた動きで自分の名前を書いたあと、ナツくんの名前を書き始める。
本人の目の前でその人の名前を書くのは、意外と緊張した。
わたしが単に、ナツくんを意識しすぎなのかもしれないけど……。
「俺の名前、画数多いから書くの大変だよね?
」
わたしがやけにゆっくり書いていたせいか、ナツくんは不安げな声でそう言ってきた。
どうやら遅い動作が、書くのに苦労しているように見えたらしい。
……違うんだよ。
実際は、緊張で手が震えるから早く書けないだけなんです。
正直にそう言えないのがもどかしい。
苦笑いをするわたしを見兼ねて、ナツくんはため息まじりな声で話し始めた。