いつでも一番星
「親もさ、もう少しバランス考えて名前つけてくれたらいいのになぁ。おまけにフルネームに森と山と樹が入ってるから、すごく生い茂ってる感じだし」
ナツくんはそう言って、半ば自嘲気味に笑ってみせた。
確かにそう言われてみると、樹木が立ち並んで生い茂っている緑色のイメージが浮かんでくる。
書き終えたナツくんのフルネームを見ると、つられるようにわたしも笑った。
「ほんとだ。確かに生い茂ってる感じがするね」
「でしょ? ちょっとうっとうしい感じもするし」
「そうかな? わたしはすごく、力強い感じがするよ。ナツくんに似合う、素敵な名前だと思う」
たくさんの樹木が根を張り、空に向かって伸びている姿は、全然うっとうしくなんかない。
むしろその姿は壮大で、力強いパワーがあふれているイメージがある。
だから、ナツくんに似合うと思ったんだ。
真っ直ぐな姿勢で、力強い心の芯で、常に前を見据えているナツくんだから。
「似合う、か……。そう言われると、なんか嬉しいな」
字を褒めたときのように、ナツくんはまた照れくさそうに笑っていた。
普段の笑顔のときにはないえくぼが現れて、かわいらしい印象になる。
力強いイメージとのギャップに、きゅんと胸が高鳴った。
「似合うといえばさ、平岡さんも名前似合ってるよね」
「えっ、わたし?」
「うん。雫って名前、綺麗で平岡さんに似合ってる」
「……っ、」
――しずく。
ナツくんの声でふいに呼ばれた響きは、聞き慣れたものとは少し違っていた。
気恥ずかしくて、息苦しくなる。
だけどもっと、聞いていたくなる。
そんな特別な響きが全身に伝わる頃には、ものすごいスピードで胸がドキドキと鳴っていた。