いつでも一番星
自分の気持ちに気づいたら、ナツくんとふたりきりというシチュエーションをやけに意識してしまって。
高まった緊張に戸惑うばかりで、上手く会話をすることができなかった。
おまけに職員室を出た直後、緊張に耐えきれなくなって、逃げるようにナツくんと別れた。
……絶対、変に思われたよね。あんな態度だったんだから。
そそくさと立ち去ったし、まともにナツくんの顔を見ていられなかったから確信はないけど、そんな気がしてならない。
ナツくんの中のわたしのイメージは、きっとあの瞬間に決まっただろうなぁ。
……もちろん、あんまりよろしくないイメージに。
そう考えると、またため息が出た。
ナツくんには会いたい。
でも金曜日のこともあるし、またナツくんの前でテンパっちゃったらどうしようって考えると、会うことが少しだけ憂鬱になるんだ。
頭ではナツくんのことばかり考えてるくせに、いざ本人を目の前にすると全然上手く振る舞えない。
自分に素直になった姿を見せたいのに、気持ちに従おうとすると緊張してしまう。
そんな臆病な自分に、わたしは早くも頭を悩ませていた。
「雫、おはよー!」
「……あっ、茉理ちゃん。おはよー」
いつまでも掲示板の前でうじうじしているわけにもいかなくて、憂鬱なまま教室に向かって歩き出す。
茉理ちゃんに会ったのは、ちょうどそんなときだった。
上履きに履き替えたばかりらしく、靴箱のところから手を振って挨拶をしてくる。
元気な声にわたしも小さく挨拶を返すけど、茉理ちゃんに歩み寄ろうとした足が途中で止まった。
だって茉理ちゃんの少し後ろに、ナツくんの姿があったから……。