いつでも一番星
ナツくんに断られていじけた横峰くんが次に頼ったのは、さっきまで口喧嘩をしていた茉理ちゃんだった。
「茉理、頼む! 一生のお願いだから、漢字プリント見せてください!」
「嫌よ。あんたの一生のお願いはとっくの昔に聞いたはずだし。そもそも、プリントを持ち帰るのを忘れたあんたが悪い。勉強の邪魔になるから話しかけないで」
わたしと一緒のように漢字プリントを見ていた茉理ちゃんは、頭まで下げて懇願している横峰くんをあっさりと追い払った。
プリントを見たまま手だけで振り払われて、横峰くんの表情が曇っていく。
元気をなくして小さくなる背中が、ちょっとかわいそうに思えた。
……と、その瞬間に、横峰くんと目が合った。
「平岡さん! 俺を助けると思って、そのプリント見せてくれない!?」
「えっ、えーっと……」
茉理ちゃんに頼んでいたときと同じように、横峰くんの頭が下げられる。
うーん、どうしよう。
かわいそうだとは思ったけど、わたしもこのプリントで勉強しなくちゃだし……。
たじろいでいると、勉強していたはずのナツくんが振り返ってため息をついた。
「おまえなぁ、人ばっかり頼ってる暇があるならちょっとでも問題解けよ。平岡さんが困ってるだろ?」
「そう言うならナツが助けてくれよー」
「絶対やだ。課題は自分でするものだし」
ナツくんが再度断ったところで、1時間目開始のチャイムが鳴った。
その音に混ざって、横峰くんの悲痛なうめき声が隣から聞こえてくる。
ごめんねと、小さく心の中で謝った。