いつでも一番星


男子にも女子にも好かれているし、憧れている人も確実に多い。

わたしだってナツくんのすごさに尊敬しているし、憧れているひとりだ。

でもわたしがナツくんに抱いている感情はあくまでも憧れであって、決して茉理ちゃんが言うような感情ではない。


「憧れ、ねぇ。毎回ナツの姿を見てはかっこいいって言って騒いだり、新聞記事を嬉しそうに眺めるほどなのに? どう考えてもあたしには、雫はナツに恋してるように見えるけど。ていうかさ、人気ある方がむしろ話しかけやすいでしょ。みんなが気軽に話しかけてるわけだし」


階段を上りながら茉理ちゃんが不思議そうに投げかけてきた言葉に、隣を歩きながらうーんと首を傾げる。

わたしにとってそれは、正しいようで少し違っていた。


「うーん……。ナツくんは、やっぱり憧れの存在だよ。憧れてるから、かっこいいって思うわけだし。なんかこうね、芸能人に抱くみたいな感情なの。遠くから眺めてるだけで幸せーな感じ。それにわたしからしたらナツくんは遠い存在だから、話しかけるなんて恐れ多いよ。だから、見てるだけで十分なの!」


高嶺の花って、まさにナツくんみたいな人のことを言うのだと思う。

綺麗だけど、決して手は届かない。眺めることしかできない存在。

……でも、それでいいの。

ナツくんはただの、憧れ、なのだから。

いくら周りの人達がナツくんに気軽に近づけたとしても、わたしは遠くから眺めているだけで十分。

十分なの。


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