いつでも一番星


紙コップの中のオレンジジュースをちびちびと飲みながら、左隣に座るナツくんの横顔を盗み見た。

横峰くんと、今度の土曜日に行われるらしい練習試合について語り合っている最中だった。

部活が休みの日でも、ふたりの頭の中は野球一色みたい。

現に息抜きとはいえ、バッティングセンターに遊びに来てるぐらいだもんね。

おまけにさっき話していたら、休みの日でも帰ったらランニングだったり何かしら走るようにしてるって教えてくれた。

下半身強化には、走ることが大事なんだって。
ちゃんと身体のことを考えてるなんてすごいよね。

横峰くんはあまり走るのは好きではないみたいだけど、ナツくんはそこまで嫌いでもないらしい。

そういえば以前、部活前に横峰くんが騒いでたなぁって思い出した。


「南工業のピッチャーって、確か球速かったよな?」

「ああ、確かそうだった。あとタイミング合わせづらい感じで……」


野球の話をするナツくんの表情は、いつも真剣で楽しそうだなぁって思う。
野球が大好きで、強い気持ちで向き合っているのがよくわかるんだ。

そしてその顔をよく見せる相手は横峰くんで、ふたりで話しているときは本当に楽しそうに笑っている。

普段見せてくれる笑顔とは違う気がするから、きっと無理しているものじゃないだろう。


……なんて、わたし、深く考えすぎかな。

無理して笑っていると思っているのはわたしだけで、実際ナツくんは何も考えていないのかもしれないもんね。

いくらナツくんが気になるからって、わたしってば余計なことまで考えすぎだよ。


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