いつでも一番星
「えいっ……!」
バッティングのときにみたいに言われたとおりに投げているのだけど、なかなか上手くボールが飛んでいかない。
球数があと2球になるまでには何とかパネルのすぐ前にまで投げられるようになったけど、あと一歩のところでパネルに当たらなかった。
おまけにそのあと投げた残りのボールの片方は、まさかのパネルから離れた斜め方向に飛んでいってしまった。
さすがにそれには、見ていた茉理ちゃんと横峰くんも苦笑いをしていた。
わたしってば、どれだけ下手なんだろう……。
「平岡さん、投げるのに必死になって視線がずれてるよ! ちゃんと前見ないと!」
苦笑いをするふたりとは違い、こんな状態でもナツくんはめげずにアドバイスをしてくれる。
バッティングのときよりも心なしか、ナツくんの指導は熱血な感じだった。
何だか、ピッチャーとしてのスイッチが入ってるみたい。言葉にさらに力がこもってるから。
そんなナツくんにちょっとだけ気圧されながら、最後の1球を手にする。
ゆっくりと、深呼吸をした。
どうか、パネルに当たりますように!
念じながら白球を握り締め、みんなに見守られながらパネルに向かってボールを投げた。
するとそれはゆるやかなカーブを描いてパネルに向かっていき、最後は下段の8番のパネルに当たって落ちた。
最後の最後で唯一パネルが開いたのを確認した瞬間、おー、という驚きの声が一斉にあがる。
「やったじゃん平岡さん! パネル開いたよ!」
パネルが開いたことに驚いて呆然とするわたしの隣で、ナツくんが自分のことのように喜んでくれていた。